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【先輩の声】ファッションジャーナリスト宮田理江さん―販売員もジャーナリストもお客さまへファッションを届ける仕事

2025 1/23
先輩の声
2025年1月23日
苫米地香織

「販売員を応援する」をテーマに、販売員時代の思い出や現役販売員へ向けたアドバイスを先輩たちに伺うこの企画。
今回は、国内外のファッションウィークを取材したり、ショップチャンネル限定ブランド「mieuxrie(ミューリエ)」をディレクションしたりと大活躍のファッションジャーナリスト、宮田理江さんが登場です。日本での「アナ スイ」人気の立役者となった宮田さんの販売員時代、ファッションジャーナリストへ転身したストーリーを伺いました。

Profile

宮田理江(みやたりえ)
多彩なメディアを通じて海外・国内コレクションのリポートや最新トレンドなどを発信するファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。販売員時代に培った「売れる商品」「流行るトレンド」を感じ取る目利きの資質を発揮し、ディレクター、コンサルタントとしてのビジネスを拡大。著書に『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(学研パブリッシング)がある。野菜好きが高じて、野菜ソムリエ(日本野菜ソムリエ協会)資格取得。「シティリビングweb」で「野菜×ファッション」を連載中。
fashion bible https://riemiyata.com/

―ジャーナリストの印象が強かったので、販売員から転身されたことを初めて聞いたときは驚きました。どういった経緯だったのでしょうか。

もともと、人と違うことをするのが好きなんです。だから、いまのように誰もが個人ブログを持てる時代になる前に、プライベートで個人のホームページを立ち上げて情報発信を始めたことがきっかけです。販売員時代にも、お客さまに情報を発信したくて、店頭で配るチラシを手書きで作っていたんですよ。
販売職を辞めてバイヤーやプレスの仕事をするようになった頃から個人ホームページで情報発信を始めて、それを見た編集者さんから記事を書くお仕事をいただくようになり、現在のファッションジャーナリストの仕事へつながっていきました。

―ブログ黎明期からネットで情報発信を続けてきた結果なんですね。ちなみに当時はどんな記事を書いていたのでしょう。

個人のホームページでは、セレクトショップの紹介や展示会の感想などファッションに関することから、アート展、映画、書籍の感想など、いろいろ書いていました。そうすると読者の方から「記事を読んでこの店に行ってきました!」「紹介していたアイテム、さっそくコーディネートに取り入れてみました」とメールを頂くようになり、お客さまと直に接することは少なくなっても、ファッション情報を届けることは、販売員時代と変わらないなと思いました。

最近ではテレビやラジオなどからコメントをもとめられることも増えている

困難な経験に鍛えられた 波乱万丈の販売員時代

―届けるものが服から情報へ変わっただけで、ファッションが好きなお客さまに届けるというところは共通点がありますね。そもそも、販売員になったきっかけは?

幼い頃からファッションやおしゃれすることが大好きで、自分の着る服は自分で選びたい子どもでした。学生時代も制服が苦手で、社会人になったら好きな服を着て働きたかったんです。
けれども、両親はファッション業界で働くことに猛反対で、すごく悩みました。そんなときに求人誌で、当時憧れていた「ニコル」の販売員募集の記事を見つけ、即応募しました。面接ではファッションやブランドへの思いを訴えて見事採用となりましたが、最初の勤務地は郊外のファッションビルにある、店長とサブと私の3人体制の店で、前途多難でした。

―それはどういうことでしょう。

販売員になれたのに、すぐには店頭に立たせてもらえず、店長とサブがメインで店頭を仕切り、私はストックルームで商品整理を任されました。毎日ストック整理しているとすっかりきれいに片付いてしまい、やることがなくなったからストックにある全商品のタグを覚え始めたんです(笑)。
品番、プライス、素材をすべて覚えて、店長から「あの商品の在庫を持って来て」と指示されたら、「あの○番のポリエステルのシャツブラウス、○○○円の商品ですね。かしこまりました」と言ってからストックへ行くようにしていたところ、店長たちの見る目が徐々に変わっていったんです。
また、店長とサブが休憩に出ている1時間は私が唯一店頭に立てる時間なので、そこでできることはすべて試しましたね。例えば、できるだけ長くお客さまに滞在していただけるように、楽しませる会話をしようと心がけました。次第に売上がついてきて、その積み重ねで個人売りの成績を伸ばすことができ、本部に認められ伊勢丹新宿店へ異動することになりました。

「マツダ」立ち上げの際にデザイナーの故松田光弘氏と共に(写真左)

―それは痛快ですね!その後は?

都心店は毎日たくさんのお客さまがいらっしゃるので、「休憩なんていらない!」と思いながら接客を楽しんでいました。その結果、店長に昇格し、ブランドリーダーになり、新規ブランドの立ち上げに携わることもできました。
しばらくしてヘッドハンティングされ、その年に日本上陸が決まっていた「アナ スイ」へ行くことになりました。私の憧れのブランドの一つでしたが、まさかこういう形で働けることになると思いませんでした。ですが、そこでもいろいろとあって……。

―一難去って、また一難ということですか。

そうですね(苦笑)。当時、西武池袋本店に一号店がオープンするにあたり、西武池袋本店のバイヤーの推薦で店長としてオファーを受けました。しかし「アナ スイ」側はすでに人員を揃え、店長も決め、スタッフ教育も済んだ状態で、オープンに向け万全な体制ができていました。そこにバイヤーの強い要望で私も店長として入ることになり、“ダブル店長”で店舗を運営することになったんです。
チームワークがすでにできている中に加わることになったので、スタッフから店長として認められた感もなく、仕事を辞めたいと初めて考えました。

―それはつらいですね。結局、どうされたのですか。

この頃はお客さまに本当に支えられました。接客に集中していれば嫌なことも忘れられるので、とにかく接客していたら、「ニコル」時代の顧客が来店してくれたり、新規顧客が徐々につきだしたりして、個人売りが伸び、結果的には西武池袋本店店内の全ファッションショップの優秀販売員として表彰されました。
結果を見せるとスタッフたちも心を開いてくれて、「どうしたら顧客がつくれますか?」と聞きに来てくれるようになりました。このときにも、何事も一生懸命に取り組めば周囲の見方が変わるということを実感しました。
そして評判はブランド運営側にも伝わり、表参道にオープンする路面店の店長に抜擢されたのです。表参道本店を売上全国1位の店に成長させて、そのご褒美とまではいきませんがニューヨークでおこなわれた「アナ スイ」のファッションショーへ行くことができました。デザイナーと直接お会いする機会を得て、お互いにヴィンテージが好きなことから意気投合し、蚤の市へ一緒に出掛ける間柄になりましたし、「宮田企画」と称して国内向けの商品の企画にも携わることができるようになりました。

アナ スイ表参道本店にて、来日したデザイナーのアナ スイ氏と一緒に写る宮田さん(写真中央)

継続が次のステップへのカギになる

―当時、「アナ スイ」の表参道本店は凄い人気だと聞いたことがあります。貴重な体験をされてきたんですね。

そうですね。本当にさまざまな経験をさせてもらいました。その頃から、お客さまにお配りするチラシを自分で作り始めて、情報発信するようになり、それがいまにつながっています。

―チラシはどんなことを書いていたのですか。

新作の入荷情報や着回し方法、ファッションショーのリポートなど、接客の中だけは伝えきれない情報を詰め込んでいました。
いまはファッションジャーナリストをしていますが、当時から伝えたいことは変わっていなくて、販売員やバイヤーの経験があるから、お客さま目線で記事を書くことができるようになったのだと思います。

―確かにそうですね。いまはショップチャンネルでご自身のブランドを展開されています。

実はこのブランドは、「ニコル」時代にお世話になったデザイナーとタッグを組んで作っているんです。ほかにも過去に一緒にお仕事したのをきっかけに現在もいろいろとオファーを頂くので、仕事が仕事を呼ぶんだなと感じています。大好きなファッション業界で仕事できるのも、長く続けてきた結果です。

お客さまに商品に込めた想いを伝えるためにモノづくりの現場にも足を運ぶ

―何事も一生懸命に続けていくことが大切なのですね。

そうですね。販売員の仕事は大変なことも多いですが、さまざまなことが学べます。例えばコーディネート力やコミュニケーション力、商品企画に携わることがあれば企画力もつきます。そして何よりも人間力が磨かれます。
初対面の方にたくさん出会う仕事はほかにはありませんから、そこで培われた力はその後の人生のあらゆる場面で活きていくと思います。

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Author

苫米地香織のアバター 苫米地香織 Fashion Commune 主宰

FashionCommune 主宰・販売ジャーナリスト
日本で一番アパレル販売員(2000人以上)を取材してきたジャーナリスト。
自分は挫折してしまった販売職の奥深さに感銘を受け、現在は販売職の地位・価値・質の向上を目指し「Fashion Commune」を運営する。

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