はじめまして。WILLSORT株式会社の海藤美也子です。
小売・サービス業を専門に、人材育成と現場支援を通じて、企業の課題解決に伴走するコンサルティングを行っています。
これまで20年にわたり、販売スタッフ・店長・マネージャーといった“現場の中核人材”の育成にたずさわってきました。アパレルやアクセサリーをはじめ、高速道路のサービスエリア、作業服など多様な業界で、現場と経営、両方の視点から成果を出すサポートを展開しています。
私がこの仕事を始めた理由のひとつに、「現場の人たちの中にある力に、もっと光を当てたい」という想いがあります。
特に店長という役職は、お店の売上も、人の育成も、ブランドの価値も背負う存在です。
そして実際、スタッフの成長に本気で向き合い、毎日の業務の中で試行錯誤を重ねている店長たちの姿に、私はこれまで何度も心を動かされてきました。
それだけ努力をしていても、店長という立場はどうしても孤独になりがちです。育成に関する悩みをひとりで抱え込んでしまうことも少なくありません。
“売上をつくる”だけが店長の仕事じゃない
店長の仕事とは、いったい何でしょうか。もちろん「売上をつくること」も大切な使命です。けれど、その数字を動かしているのは“人”。スタッフが力を発揮し、チームがうまく機能してこそ、はじめて売上が生まれていきます。
だから店長には、「売上をつくる」と同じくらい、“売上をつくれる組織”を育てることが求められます。つまり、人を育てることも、店長の大事な仕事のひとつなのです。この「人を育てる」という視点を、自分の責任としてどれだけ本気で引き受けているか、それによって、店長としてのスタンスには大きな差が出てきます。
現場を任されている以上、数字にも、人にも、どちらにも責任を持つ。その覚悟があるかどうかが、“できる店長”かどうかの分かれ道だと、私は思っています。
「Z世代、どう関わればいい?」と悩む店長が増えている
この前提に立ったときに、最近、現場でこんな声を耳にするようになりました。
「新人が何を考えているかわからない」
「指示してもなかなか動いてくれない」
「叱ったら辞めてしまいそうで、怖くて何も言えない」
特にZ世代と呼ばれる若手スタッフに対して、「関わり方がわからない」という声は年々増えている印象があります。
「教えているのに動かない」「何を考えているのか分からない」そんな“もどかしさ”に、日々直面している店長も多いはずです。この壁を越えられるかどうかは、世代の違いに注目するよりも、目の前の“その人”をちゃんと見ているかどうかにかかっています。たったそれだけ?と思われるかもしれませんが、この「見る姿勢」ひとつで、関係の深さも、関わる頻度も大きく変わってくるのです。要は「決めつけ」てしまっていないかということです。
Z世代と働く上で、いちばん大きな分岐点は、世代間ギャップそのものではなく、決めつけずにどう向き合うか。私は、そこにすべてがかかっていると思っています。
「Z世代ってさ…」と言っているうちは、うまくいかない
私はこれまで、多くの現場で店長たちと対話してきましたが、「Z世代なので」「最近の子は…」という言葉が口癖になっている人ほど、育成がうまくいっていないという傾向がありました。

もちろん、価値観や育ち方が違うことによる“やりづらさ”はあるでしょう。でもその違いを「だからしょうがない」で片づけてしまえば、関係は深まりません。
相手を「Z世代」と一括りにしてしまうと、その瞬間に“ひとりの人”として丁寧に見る視点を失ってしまいがちです。
「なんでこんなこともできないの?」という不満の裏には、「自分ならこう動くのに」という期待と比較があります。その期待が通じないことにイライラし、相手を“理解できない存在”として遠ざけてしまう。
でも、よく観察してみると、決してそれだけではないことに気づくことができます。
反応が薄い、主張しない、リアクションが読みにくい……その態度の奥には、「どう関わればいいのか分からない」「失敗したくない」という不安や迷いが隠れていることも多いのです。
世代の“違い”に目を向けるよりも“見方”を変えてみること。
「最近の子は…」ではなく、「この子は、どうすれば自分の力を出せるんだろう?」と考える。相手をZ世代などで分類するのではなく、“目の前のひとり”にちゃんとまなざしを向けること。それだけで、関係の温度は驚くほど変わってきます。
“育てる”を、自分の仕事として引き受けよう
Z世代という言葉が出てくるたびに、「最近の若い子は難しい」と言ってしまいたくなる気持ちも、わかります。ですが、そこで思考を止めてしまった瞬間に、関係づくりも育成も完全に止まってしまいます。
人が育つ環境は、上司の“姿勢”によってつくられます。だからこそ、「どう向き合うか?」というリーダーの姿勢が、何よりも大切になってきます。“できる店長”とは、自分のやり方に固執するのではなく、目の前のスタッフが動きたくなる理由を、一緒に探そうとする人だと私は思います。
この連載では、そんな「人を育てる力」について、できるだけ現場の感覚に寄せて、言葉にしていきたいと思っています。次回もぜひ、読みにきていただけたらうれしいです。
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