ファッション小売業の発展や会員企業の親睦交流、社会貢献活動の実施を目的とし、1991年に発足した「スペシャリティ ストアーズ アソシエーション(以下、SSA)」。
現在の会員企業は、ユナイテッドアローズ、アバハウス、ビショップ、ノーリーズ、ビームスの5社で、企業の垣根を超え、各社で働く35名の店長たちが、この1年間で4回実施される研修や研修や社会貢献活動などに参加する。その今期最初の研修が、2024年9月12日に国際文化会館にて開催された。
ファッション小売業におけるSSAの歴史
SSAは、ユナイテッドアローズが1号店をオープンした翌年1991年に発足した。同社とビームスを中心に、専門小売店を祖業とするファッション専門小売業5社が入れ替わりしつつ、毎年研修などをおこなってきた。
小売業において最も大切な存在である販売員の育成や地位向上に自社だけで取り組むのではなく、他社と交流しながら、業界全体で販売員の“質的向上”と“地位向上”を図っていくこと目的だ。
基本的には年間4回施策が開催され、その内2回はフォーラムと称した研修や異業種のスペシャリストを招いての講演会、あと2回は夏におこなう葉山エリア海岸のビーチクリーン活動と年末のチャリティーパーティといった社会貢献活動になる。
過去のフォーラムでは、郊外研修として日本航空やホテルオークラなどに出向き、異業種のサービスを実際に受けながら、サービスの神髄をプロフェッショナルから学ぶ研修などがおこなわれた。
年末のチャリティーパーティでは、これまで34カ所への支援を実施。東日本大震災の津波被害で作物を育てられなくなった畑で、塩に強い綿花を育て塩害農地を再生させるコットンプロジェクトの支援や、カンボジアの地雷除去活動への支援など、毎年、社会状況を鑑みながら支援先を選択している。実際に支援先の人たちから現状について説明を受け、寄付金を集める活動をおこなってきた。

店長歴1~3年の店長たちが悩む多様性に合わせたチームづくり
今期SSAは「チームの成果をあげるための組織づくり」がテーマ。9月12日に開催されたフォーラム1では、各社から店長7名、全35名が参加した。
午前中は、店舗においてのチームの関係性の向上や組織づくりについて、専門家の講演を聞き、午後はその内容を基に自店の課題を洗い出し、明日から何をするか、ショップのリーダーとしてどうありたいか、などを書き出すワークをおこなった。
ショップの形態によって変わるが、ほとんどの店舗では、Z世代の若手新人スタッフから店長自身よりも勤務年数の長いベテランスタッフまでが在籍し、共に働く。時短で働く子育て中のスタッフ、外国人スタッフなどが在籍するケースも増えている。さまざまなタイプの販売員がいるチームにおいて、店長はどうあるべきか悩むことも多いだろう。
だからこそ、同じ立場にある人たちと共通課題で話ができる機会は貴重だ。

各テーブルでのディスカッションは大いに盛り上がり、店舗の環境は違えど同じ課題を抱えていることがわかったり、共通の問題があっても違う視点で解決への糸口を見つけることができたり、あらためて店長としてどうありたいかを考えた人もいて、大きな学びになっていたようだ。
参加した店長からは「チームビルディングに悩んでいたので、実践的な解決方法を聞けて良かった」「どうやってスタッフと接したらいいか迷っていたが、自分らしさや店をどうしていきたいかビジョンを見せることが大切だと分かった」「世代間ギャップに悩むことがあったが、どの世代でも分け隔てなく関係性を築いていきたい」などの感想があがった。
ファッション業界で働く人の多くは「服が好き」「ファッションが好き」で入ってくる。好きなことを仕事にできるのは幸せである一方、好きなことだけに集中し過ぎてしまいがちで、政治経済のニュースなど一般常識に触れてこない人もいる。一見すると仕事に関係ないように思える世界情勢なども、実は自分たちの仕事につながっているので、広く興味関心を持っておくことは大切だ。
販売員たちの質的向上を目的とするSSAのような仕組みが、これからも続くことを願う。