ものをつくるという行為には、必ずたくさんの人の手が介在する。
例えば、いま店頭にある服やバッグ、シューズなどの服飾雑貨も、全て工場で職人たちが作っている。
数年前に、子どもが「魚は切り身の姿で泳いでいると本気で思っている子どもがいる」なんていう話を耳にしたことがあるが、最近は洋服も自動で出来上がると思われているそうだ。服飾専門学校で服作りを学んで初めて、人がミシンを使って縫っていることを知り驚く学生もいるという。
ものづくりの現場も日々技術革新が進んでいるものの、洋服や靴、バッグなどの人が身に着けるものは、構造上、人の手でないとできない作業がほとんど。だから高い技術力を持つ職人は貴重な逸材として、エルメスやルイ・ヴィトンなど皮革製品で名をはせるブランドでは重宝されている。
高級時計店も認める最高の技術を持った老舗皮革ブランド
フランスの皮革製品ブランド「カミーユ・フォルネ」では、そうした職人たちの高い技術力を披露するイベントを銀座本店や大阪店などで開催している。店頭で一針一針、丁寧に仕上げていく工程を見せることで、お客さまは「大切に使おう」という気持ちが湧き、職人のファンになっていく。
「カミーユ・フォルネ」は、フランス・ピカルディ地方で、馬具職人のカミーユ・フォルネによって1945年に創設された。創業当時から製作する時計ベルトの品質の良さが高級時計メーカーの間で評判になり、80年以降、数多くのブランドへ供給するようになった。
その技術を活かして90年代後半からは、スモールレザーグッズ、バッグなどの製作も始めた。
現在でも「カミーユ・フォルネ」の製品は全て、創業の地ピカルディ地方テルニエにある自社工場で280人以上の職人たちの手によって製作される。2019年に工場を増設し、時計ベルト部門、バッグ・レザーグッズ部門とに分かれてから、より職人技術の探求と製作効率を上げている。
レザーグッズの製作には、馬具製作に由来する手縫いの技法「クチュール・セリエ(英語ではサドルステッチ)」や、革の裁断面の“コバ”を美しく仕上げる「コバ仕上げ」など、高い技術を必要とする工程がある。
素材の品質と完璧な製品の仕上げにこだわる「カミーユ・フォルネ」では、こうした技術を継承するため、妥協を許さず時間をかけて職人たちを育ててきた。
日本にも本国の職人たちが認める、高い技術を身につけた技術者がいる。
本国の技術認証を受けたアトリエTOKYOの技術者たちは、ブティックから届く時計ベルトやオートクチュールのオーダー品の製作を担当。ほかにも、お客さまが大切に使い続けてきたレザーグッズの有料リペアサービスの対応も担う。 そして、時計ベルト実演販売イベントでは「カミーユ・フォルネ」が誇る技術を披露している。
アトリエTOKYOの技術者の一人、福澤百里子さんは実演販売イベントについて、次のように話す。
「実演販売は緊張しますが楽しいです。お客様に『カミーユ・フォルネ』の製品や、ものづくりに興味を持っていただける貴重な機会になっていると思います」
「カミーユ・フォルネ」の技術を受け継ぐ職人、福澤さんに仕事について話を聞いた。
オーダー品製作は一品一品が新しい挑戦
―なで職人を目指したのでしょうか。
福澤さん 母が洋裁をしていたので、私も小さい頃から真似をして、いろいろなものを作っていました。幼稚園の頃には自分で通園バッグを作ったのですが、幼稚園には持っていかず遊びに行くときに使っていました。
自然の流れでものづくりを学びたいと思い服飾専門学校へ進み、オートクチュール科を卒業。在学中は本物の毛皮や高級素材を使用してドレスなどを作りました。
―「カミーユ・フォルネ」で働くことになったきっかけは?
福澤さん 最初に就職した会社が合わず、すぐに転職することを決め、友人から勧められてハローワークに行ったところ、カミーユ・フォルネ ジャポンの求人を見つけました。求人票を見つけた瞬間から「これは私がやる仕事だ!」と運命を感じました(笑)。
―働いてみていかがでしたか。
福澤さん 自分が思い描いていたものづくりの仕事ができてうれしいです。
―アトリエの仕事は主にどんなことをするのでしょうか。
福澤さん 主に修復とオーダー品の時計ベルトの製作を担当していますが、お客さまがご使用されてステッチがほつれたり、コバが剥がれたりしたバッグや時計ベルト、裏材が汚れたりしていたんだ時計ベルトの修理も行っています。
また、フランスから届いた製品をアトリエTOKYOの技術者の目で再検品するのも仕事です。
本国の技術承認を受けたアトリエ技術者がいる日本では、時計ベルトの製作ができます。私の上司はフランスにあるテルニエ工場で数カ月かけて技術を身につけ、私を含め4人のアトリエ技術者を育ててくれました。
―どんなことから習い始めるのですか。
福澤さん 最初は練習用の革を使い、裁断、縫製、コバ塗りの技術を身につけて、修復作業から始めます。初めて商品を手掛けたときは緊張しました。上司の隣に席をもらい、常に上司の技術を見て、手取り足取り教えてもらいました。
―オーダー品を手掛けるようになったのはいつ頃ですか。
福澤さん 入社して1年を過ぎた頃だと思います。オーダー品はサイズや素材など、仕様がお客さまによって異なるので、毎回、新しい挑戦をしているような感じです。
―実演販売イベントはいつから出られるようになったのですか。
福澤さん 2019年頃からです。手縫いのパフォーマンスをきっかけにブランドや商品に興味を持たれる方も多いですし、手縫い体験をしたお客さまの中には、その素晴らしさを実感してオーダーされる方もいらっしゃいます。
オーダー時にお客さまが「ぜひ、手縫いでお願いします」と言ってくださったり、イベントに何回も足を運んでくださるお客さまと顔見知りになったり、普段はアトリエにいるので、お客さまの顔を見る機会があるのはうれしいです。
―今後、やってみたいことや目標を教えてください。
福澤さん 時計ベルト製作以外の製品を作れる技術を身につけたいです。
時計ベルトとレザーグッズはつくりが全く異なり、本国でも工場が別になっているほどです。スモールレザーグッズ製作がやってみたいことでもありますが、やはり製作技術の習得は今後の目標です。
店名 CAMILLE FOURNET 銀座本店
所在地 東京都中央区銀座8-8-1 1F
営業時間 11:00~20:00
日・祝日11:00~19:00
公式サイト https://www.cfjapon.co.jp/