1969年創業の内田縫製が、約3億円をかけて新工場を建設する。縫製業界では異例となる国内に縫製工場を新築する本事業は、既に津山市の本社近くの農業用地約4700平方メートルを取得しており、2階建てで延べ床面積は現工場の約3倍の約1300平方メートルとなる。
本社機能の移転と国内初の自社ショップも併設し、工場見学や縫製体験などものづくりの現場を体験できるプログラムも用意し、国内外からの日本製ジーンズファンが訪れる体験型施設として、23年12月に造成工事を始め2024年秋の開業を予定している。
工場からブランドへ、老舗ジーンズメーカーの挑戦
内田縫製は岡山・児島で生まれた日本ジーンズの歴史と共に歩み、日本製ジーンズの黎明期を担ってきた老舗縫製企業。近年は海外ハイブランドからの受注などもあり、その縫製技術の高さが世界的に評価されている世界でもトップレベルのジーンズメーカーとしてOEMを中心にジーンズ製造を手掛けている。2016年には自社ブランド「UCHIDA HOUSEI」をD2Cファクトリーブランドとして立ち上げ、国内各所でのPOPUP販売と自社EC販売を開始。2022年にクラウドファンディングに挑戦した、はき込むと虹色が浮かび上がる「レインボージーンズ」は当初目標を大きく上回る5000万円を調達し大ヒット商品となっている。
日本の縫製文化を守り受け継ぐ
新工場建設の目的の1つに工場の拡大による生産能力の拡大がある。ミシンを70台から100台に増やし、製造ラインも現状の1ラインから2ラインに増やすことで、現在35人いる従業員を段階的に5~10人ほど新たに採用することを目指していく。
自社ブランドを始めてから若者の入社が増えて、20~30代の従業員も10人以上いる当社が、さらに若い職人を増やして行くことは、生産量を高めるだけではなく、多品種小ロットの生産に対応しつつ若手の技術力を培うためでもある。
日本で流通する服は、1990年に約5割が国産品として国内で製造されていたものが、2022年には1.5%と激減。それはつまり国内縫製工場の減少に直結しており、このままでは日本で培われてきた縫製技術が国内から失われてしまうという危機感を持ち、若手職人の育成は縫製企業として当社の使命だと考えている。そのため、新工場の建設によって労働環境の改善にも努め、カフェスタイルの食堂の新設や直接対面販売する自社ショップの併設を通して、モノづくりの楽しさとやりがいを最大限に感じられる縫製工場になること目指している。
津山の歴史を汲む「高瀬舟」をモチーフとした建築デザイン
本事業においては、同じ岡山県北に拠点を置くデザインファームnottuo(西粟倉村)をパートナーに、工場設計と並行して当社のリブランディングも協創して進めていく。
工場のデザインは津山が発祥の地とされる高瀬舟をモチーフとした木製屋根板が印象的な外観の設計に。「暮らしとともにある縫製工場」をコンセプトに一般的な工場とは異なり地域住民や自社ブランドのファンに向けて開放的な空間となる。