1997年に誕生したジュエリーブランド「GARNI(ガルニ)」。「身に着ける人の輝きを引き立てる名脇役になってほしい」との思いを込め、デザイナーの上野健夫さんが自ら手を動かし、かたちを削り出すジュエリーには強さとやわらかさが同居する。
ブランド30周年を控え、2025年のコレクションでは新たな感性をプラスするべく、クリエイティブチームに金山大成さんが率いるONE FIVEを迎え、“新生GARNI”としてスタート。6月11日(水)から伊勢丹新宿店でポップアップも開催される。
ものづくりと新生GARNIについて、上野さんと金山さんに話を聞く。

—新たなクリエイティブディレクションの下、2025年春にChapter 1 , 2025コレクションを発表しました。金山さんと共創することになった経緯は。
上野さん 2027年に30 周年を迎えるにあたり、新しい発想や表現を取り入れていきたいと考えていました。金山さんが手掛けていたジュエリー(h’eres)にも興味があり、実際にお会いして感性や、ものづくりへの真摯な姿勢に強く共感し、ぜひご一緒したいと思ったのがきっかけです。
初めは悩んだ部分もありましたが、初回の打ち合わせでお互いの好みや考えを話すうちに共通点が多いことがわかり、自然と前向きに進められるように。
ONE FIVEでもジュエリーブランドを展開されているので、細かな製作面のやり取りもスムーズで、発想力と技術力がうまく融合したコレクションに仕上がったと思います。
金山さん 今回の共創は、僕にとって大きな挑戦であり、新しい可能性を感じたプロジェクトです。GARNIは日本のジュエリーブランドとして確固たる地位を築いていて、唯一無二のデザインやクラフトマンシップには以前から強く共感していました。製作を進める過程では、上野さんのデザインの細部までこだわり抜く姿勢から、多くを学ばせていただきました。
ブランド理念やデザインに共鳴する部分も多く、僕たちが大切にしている「個性の尊重」と、GARNIの持つ「無骨さの中にある洗練された美しさ」が交わり、新生GARNIとしても唯一無二のコレクションを生み出すことができたと思っています。
—GARNIのものづくりで上野さんが大切にされていることは。
上野さん 人の手で生まれる独特のテクスチャーを大切にしています。エッジの効いたカットや有機的な曲線もすべて、手を動かしながら少しずつかたちにしていくもので、GARNI らしさをつくるうえで欠かせない要素です。機械では出せない、わずかな揺らぎや温もりを含んだアナログな質感や空気感を大事にしています。
意識しているのは、ジャンルにとらわれすぎず、その時々の空気を柔軟に取り入れながら、多様な発想をかたちにしていくこと。特別な日だけでなく、日常の中でも自然に身に着けてもらえるようなジュエリーをつくっていけたらと。
—金山さんはご自身のジュエリーブランドも展開されていますが、共創でのものづくりと意識に違いはありますか。
金山さん 独立してONE FIVEを設立した背景には、「世界に誇れる日本発のブランドをつくりたい」という強い想いがありました。国内外のファッションシーンを見てきて、日本のクリエイティビティや職人技をもっと世界に発信したいと考えるようになったのです。
そのためh’eresはアジアに向けた発信を強く意識しており、シンプルでありながらも存在感のあるデザイン、普遍的な美しさを追求することがブランドの核です。
一方で、コラボレーションにおいては、相手ブランドの世界観や価値観を尊重し、どのように互いの強みを引き出せるかを考えています。 GARNIとの協業では、彼らの無骨さと僕たちのエレガントな要素をどう融合させるかがポイントでした。結果的に、両者の個性が活きたアイテムを生み出せたと思っています。

—お二人の原点は、上野さんは人の思い描くデザインを丁寧な手作業でかたちにする職人、金山さんは作り手と使い手をつなぐ販売職。キャリアのスタートが異なるお二人のものづくりは、FashionCommuneの読者にとって興味深いと思います。
上野さん 「企画の仕事に携わりたい」という思いからジュエリーの世界に入ったので、もともとはデザイナー志望ではなかったんです。だから最初は、既存デザイナーが描いた絵型をもとに原型を作る業務が中心でした。少しずつ学びを重ねる中で、2006年のコレクションで初めて自分が中心となって企画・デザインを担当する機会を得たことがきっかけで、デザイナーという職業を意識し、次第に志すように。
ジュエリーは、着飾る楽しさだけでなく、お守りのように身に着けたり、大切な人への贈り物として想いを伝えたりと、さまざまなかたちで人に影響を与えることができる存在だと思っています。また、長く愛用され、時を超えて人から人へ受け継がれていくこともあり、その色褪せない価値が大きな魅力です。
金山さん 僕のキャリアのスタートは、ファッションとデザインへの強い情熱が始まりです。幼い頃からファッションに興味があり、服の作り方やデザインの成り立ちを学ぶことが好きでした。そうして学生時代に独自のスタイルを発信し始めると、多くの人に共感してもらえるように。
22歳のときに本格的にファッション業界に飛び込み、自身のブランドを立ち上げることで、多くの人々に価値を届けることを目指しました。
独立して起業したONE FIVEではファッションブランドの SUBLATIONSの運営のほか、SNSマーケティングなど現代のデジタルシーンに合わせたさまざまな事業展開を進めています。自社ブランドだけでなく、他社との協業やコンサルティングも行うことで、業界全体の成長や発展にも貢献したいと考えています。
—金山さんはセレクトショップで販売職、店長、販促、デジタルマーケティングなど、さまざまな職種を経験して現在を迎えています。当時の経験で今に活きていると感じることはありますか。
金山さん アパレル業界で経験したことは、今の僕のビジネススタイルやものづくりの感覚に大きな影響を与えています。特に、「どう見られるか」ではなく、「どう感じてもらうか」を意識するようになりました。
服やジュエリーはただのモノではなく、着る人の個性や気持ちを引き出すツールだと思っています。その考え方を軸にしたデザインやブランディングを心掛けています。
—今回の取り組みで印象に残っていることは。
上野さん Chapter 1 , 2025コレクションを象徴する「Armor Ring」と「Fingertip Ring」(記事トップの左の画像のアイテム)は、何度も打ち合わせと試作を重ねながら、デザインや厚み、着け心地に至るまで細部を調整して完成させました。GARNIとしても初めて手掛けるアイテムだったため、ファッション性と実用性の両立を強く意識しました。特に「Fingertip Ring」については、最後までどちらのデザインにするか悩んだ経緯があり、とても思い入れのあるアイテムです。
金山さん 一番印象に残っているのは、デザインの最終調整のとき。僕たちが目指すイメージに対して、上野さんが「これで終わりじゃない」という言葉をかけてくれたんです。その言葉に衝撃を受けました。デザインをさらにブラッシュアップするために、何度も試行錯誤し、手作業で修正していく姿勢には見習うところがたくさんあります。
最終的に完成したアイテムはどの角度から見ても完璧で、僕たちにとっても、GARNIとしてもこだわりが詰まったコレクションになりました。

—最後に今後の展開として考えていることは。
金山さん ONE FIVEとしては、日本発のブランドを世界に広げていくことを目指しています。自社のグローバル展開はもちろん、h’eresもアジアから世界へ、唯一無二のデザインを届けたい。
ファッションを通じて、新しい価値観やライフスタイルを提案できる存在になれたら。単なるファッションブランドではなく、“生き方をデザインする”ようなブランドを目指し、挑戦を続けていきます。
新生GARNIの記念すべきコレクションが、伊勢丹新宿店本館2階のTOKYOクローゼットでのブランド初のポップアップ開催につながったことはとてもうれしいです。
上野さん これまではメンズブランドとしての印象が強かったかもしれませんが、今後はよりユニセックスなジュエリーの企画やプロダクトを意識した展開を目指していきたいと考えています。
その第一歩として、2025年6月11日から伊勢丹新宿店本館2階のTOKYOクローゼットにて、ポップアップを開催します。 会場では、先行発売となる新作に加え、お好きな天然石を選んでいただけるオーダージュエリーもご用意します。ぜひ足をお運びいただき、GARNIの新たな一面を感じていただけたらうれしいです。

ポップアップ概要
会期:2025年6⽉11⽇(⽔)〜 6⽉17⽇(⽕)
会場:伊勢丹新宿店 本館2階 TOKYOクローゼット
展開内容:2025「Chapter 1 , 2025 ‒ PRIMITIVE / MODERN」のアイテムを中⼼に、⼀部MODERNラインの伊勢丹新宿店 期間限定ショップ先⾏発売をはじめ各種企画をご⽤意。
・MODERNラインの先⾏発売
・“天然⽯”を選ぶオリジナルジュエリーオーダー販売
・お買い上げの⽅にオリジナルシルバー磨きをプレゼント(なくなり次第終了)
など