2025-26年秋冬のファッション・ウィークが世界各国でおこなわれ、先日は2025年3月17日(月)から始まるRakuten Fashion Week TOKYO 2025 A/Wの詳細も出たところではあるが、国内の実力派ブランドが先行してショー形式のコレクションを発表している。
その中から2月5日におこなわれた2つのブランドをレビューしたい。
「SEVESKIG」ストリートと伝統技術がクロスオーバーした新しい価値を表現
改装のため休館中だった国立劇場でおこなわれたのは、長野剛識デザイナーが手掛けるブランド「SEVESKIG(セヴシグ)」。
25-26年秋冬は、日本の独自の美意識をインスピレーションにデザインを構築。特に「無常」の思想に注目し、すべてが移ろいゆく自然の摂理を受け入れる姿勢を反映した。日本文化の根底にある、儚いものや瞬間的な美しさ、不完全さ、経年変化など、単なる老朽化ではなく、自然の営みや長い年月によって現れる個性など、内面からにじみ出てくる美しさに着目し、アイテムの中へ落とし込んだ。


アイテムそのものはストリートの要素満載で、トレンドのビッグシルエットや超ワイドなボトムス、フィーディアイテム、セヴシグが得意としているレザーアイテムが登場。先シーズンからコラボしているアートクラフト「AVANI」とのコラボレーションアイテムも引き続き展開している。

「AVANI」とのコラボアイテムには、半纏のような古布を模した生地を用い、吉祥文様の一種である紗綾形をパッチワークが取り入れ、古い物を大切にする精神を表現。ほかにも、独特な色合いや質感のレザーのライダースジャケットには京都伊根で制作された焼箔の技法を用いているなど、いたるところに日本の伝統的な文様や技法、素材などが組み込まれていた。
現代のストリートファッションのポップさと日本の伝統技法が交錯するコレクションが、国立劇場という日本の伝統芸能の舞台で披露されたということに意味を感じるものがあった。


「TANAKA」美しいパラレルワールドへいざなう日本の技術
国立代々木競技場 第二体育館にてランウェイショーをおこなった「TANAKA(タナカ)」の25-26年秋冬は“SIDE A”というテーマで、ファッションを通して平和を願った。


争いの絶えない現世を“SIDE B”だとすれば、パラレルワールドである“SIDE A”はミリタリーウェアが必要なくなった世界と定義し、ミリタリーウェアを解体し、日本古来の裂き織り技法を用いツイード生地に織り込み、フライトベストには京都の西陣織の技術をグラフィカルに取り入れた、日本の技術で浄化していくようなコレクションを展開した。
「TANAKA」では、今回のショーから新たな試みとして、日本が誇る技術を用いたコレクションを「Art of TANAKA」と称して発表した。


ショーのフィナーレ、ランウェイに雪が舞い始めると今季のテーマである“SIDE A”の世界へ。24年9月に訪れた広島の平和資料記念館で見た、世界各国から送られた千羽鶴から着想を得た、千羽鶴のモチーフがついた真っ白なドレスが登場に、会場中の人が息をのんだ。 戦いのために着るミリタリーウェアがある一方で、身を守るための衣服、人を幸せな気持ちにする衣服などもあり、あらためて衣服の起源や本質について考えさせられるコレクションになっていた。
