「すべての美は数式であり、ファッションは学問である」を提唱するファッションプロデューサー・服飾専門家のしぎはらひろ子です。この連載では、ファッションのプロとして身につけておいてほしい「ファッション理論」をお伝えしていきます。
前回の基礎編では、小学校で習う日本語の文法をおさらいしました。日頃、私たちは日本語で話していますが、人に何かを正確に伝えるためにはルールがとても大切であることが伝わったかと思います。
今回は応用編として、商品情報を正しく伝えること、さらに商品を魅力的にみせる表現力について学びましょう。
フィーリングだけの会話から脱却し説得力を上げる
前回も「フィーリングだけで商品のことを伝えていませんか」とたずねましたが、フィーリングで話しても商品の魅力が伝わることもあります。それは、友人のように関係性が築けている顧客やブランドの熱烈なファンで、商品をよく知っている場合に限られます。
例えば、初来店のお客さまを接客していて、共通の話題で会話が弾んだとしましょう。その流れで「このアイテム、可愛いですよね。とてもお似合いです!」とフィーリングでお伝えしたとして、気分が高まっているお客さまはお買い上げされました。その後、お客さまはどうなると思いますか。
お客さま自身が「似合っている」と実感しているアイテムで、手持ちの服とも組み合わせられる服であれば、その後もあなたを頼って来店するかもしれません。
反対に、自宅へ帰って冷静な目でそのアイテムを見直して「似合わなくもないけど、ちょっと違っていたかな?」と感じたらどうでしょうか。せっかく買った服なのにほとんど出番はなく、いつのまにかタンスの肥やしに……。さらに、あなたの接客がマイナスイメージになるかもしれません。
そうならないためにも、接客では商品説明だけでなく、お客さまのニーズを確認することが重要なのです。ニーズ確認は、第6回でお伝えしたTPO(Time・Place・Occasion)、PPS(Person、Purpose、Season)でお客さまに聴くことです。
お客さまのニーズを把握した上で、この服がお客さまの悩みをどう解決するか伝えることができると良いでしょう。加えて、どのポイントがお客さまにどう似合うのかも伝えることができれば完璧です。
お客さまから「キチンとした印象に見える服を探してて……」と相談されたとき、あなたはお客さまの言う「キチンとした」がどんな服なのか想像できていますか。
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