「販売員に必要な資質は?」と質問してきたあとに「やっぱり販売員はコミュニケーション力が必要ですよね?」という言葉が続くことがあります。
個人的には「コミュ力ってそこまで必要か?」と思いますし、そもそもコミュニケーションができなければ接客に限らず仕事そのものが上手く回らないということにつながります。
では、本当に“販売員に必要な資質”を考えてみましょう。
お客さまへ商品を届ける導線とは
前回、販売員の仕事は物を売ることは大前提として、お客さまの手に商品を届けるまでの導線を創る役割があり、要は“お客さまと商品の架け橋になる”ことがいまの販売員には求められていると説きました。
インターネットが気軽に使える前は、情報を受け取るためにファッション雑誌を読むしかありませんでした。さらにファッション雑誌に載っていない最新のトレンドを知るためには、オシャレな販売員がいる店へ行くしかありません。そこで販売員と仲良くなり、服のことはもちろん、オシャレな人が集まる場所やオシャレになるための知識や情報をもらうということをしてきました。
インターネットが気軽に使える今は、どうでしょう?スマホやパソコンで何でも調べられます。「ファッショントレンド 2025年」とネット検索するれば、有象無象の情報が出てきます。欲しいものがあれば「Tシャツ ピンク キレイめ」と検索すれば、それに該当するアイテムがどんどん表示されます。
いまやお客さまと商品が繋がる導線は、販売員だけに限らないということです。
皆さんも何かネット検索すると「たくさん情報が多すぎて選べない」「何が本当なのか判断つかない」となったことはありませんか?一人でさばききれないほど多くの情報が溢れています。
欲しい服を検索すると「そういうのではない」というのも表示されます。ましてや「これは私に似合うかな?」と悩んで買えないこともありませんか?最近では多すぎる情報をAIがまとめてくれていますが、ざっくり過ぎて内容がしっくりこない。やはり、その道のプロに情報を精査してほしいと思う人も出てきています。
そう考えるとファッションのプロである販売員には、まだまだやれることがたくさんあります。
そこで販売員にどんなスキルが必要なのか
これは経験則と個人的な意見になりますが、私は「好きなこと、興味のあること、できることに注力するだけでいい!」と考えています。何故かというと、自分が好きなこと、興味があること、できることが、お客さまに商品を届ける次の一歩になるからです。
「風が吹けば桶屋が儲かる」という話をご存知ですか。落語のネタにも使われる江戸時代の浮世草子で、どうして風が吹くと桶屋が儲かるか気になる人はネット検索してみてください。
この話は一見するとなにも脈絡もない出来事から物が売れる、という流れを面白くおかしく例えた話です。
数年前、アニオタに優しい美容室が話題になったことがありました。オーナーが好きなアニメや漫画を店に置いたことで、アニメや漫画が好きだけど、普通の美容室は苦手という客が集まるようになったそうです。髪を切りながら、なんて答えたらいいかわからない質問や当たり障りのない会話をされるよりも、自分の好きなものが近くにある店のほうが「なんとなく安心」とアニメ好きが集まるようになったとか……。
人は、自分の好きなことなら何故か流暢に話せたり、初めましてな人でもお話しすることできます。販売員も自分の好きなキャラがお客さまのバッグについていたら親近感が湧いて、お客さまに興味を持ちません?そのキャラが好きならこれが勧め!という感情が出てきませんか?
だから、SNSを頼るのではないでしょうか。同じ趣味を持つ人はどんな服を着ているのか?と調べてみて、まずは同じ趣味を持つ人たちと同じような服装をして、安心感を得る。
だ・か・ら、自分が好きなこと、興味のあること、得意とすること、できることを日々磨いておくだけでいいんです。そしてできれば、それを何かの形で発信するのです。わざわざ苦手を克服する必要はありません。
ですが、この考え方は商品を売るということに直結しないので、売上をあげたい企業にとっては即効性に欠けます。でも“持続可能”ではあります。
私は「販売職はクリエイティブで持続可能な仕事である」と考えています。だからこそ、好きなことで生計を立てられるファッション・アパレル業界にしていかなくてはと思っています。