「すべての美は数式であり、ファッションは学問である」を提唱するファッションプロデューサー・服飾専門家のしぎはらひろ子です。この連載では、ファッションのプロとして身につけておいてほしい「ファッション理論」をお伝えしていきます。
会社や商業施設の研修でも最近増えている「パーソナルカラー」。店頭でも「私はイエベの春だから…」と話されるお客さまに出会う機会も増えているのではないでしょうか。そこで今回は「色」についての正しい知識をお伝えしていきます。
パーソナルカラーの歴史
皆さんは、スーパーマーケットで野菜や果物を買いに行き、美味しそうな色にひかれて購入したものの、自宅であらためて見ると「あら?色が薄い?」と感じたことはありませんか。色には「周りの色が映り込む」という特性があり、パッケージの色を反射させて、お野菜や果物の色をより濃く、新鮮に見せる演出をしていることがあります。
洋服にもこの原理と同様、首回りにある色が顔に反射することで顔色が変化して見えることがあります。この特性を活かして自分の顔色や肌色を美しく見せることができます。その原理がパーソナルカラーに組み込まれているのです。
今回は、あらためて“パーソナルカラー”はどういうものなのか解説していきましょう。
ドイツの文豪としても有名なゲーテは、1810年に自然科学者として『色彩論』という著書を残しています。さまざまな実験の末、ゲーテは光に近い色が黄色、闇に近い色は青色であると発見し、それを両極に置いた色彩環を提唱しました。
その後、1928年のアメリカにて、実用色彩調和理論の創始者・色彩心理学者であるロバート・ドア博士が、色彩分析技法によるメソッドを発表。自然界に存在する一体の造形物(植物、動物、鉱物など)は、それに含まれている青色と黄色の色素の物理的比重により、その比重の大きい色素が色味を決定していることを発見しました。
その考えを元に作成したのが、ブルーアンダートーン(青みよりの色)とイエローアンダートーン(黄みよりの色)の2つに分類するカラーキープログラムでした。これが現在のパーソナルカラーの起源といわれています。
1940年代になり、アメリカでは“カラーコンサルタント”という職業が誕生しました。建築やインテリア、ファッション、メイクなどの分野において、色彩を効果的に使う方法が広がり、発展していきます。
さらに1980年代には、キャロル・ジャクソンがパーソナルカラーの教本となる「カラー・ミー・ビューティフル」を出版。この本は世界的にもヒットし、日本にもパーソナルカラーが上陸しました。
日本では90年代後半くらいから本格的にパーソナルカラーが注目されるようになり、色について勉強をしている人やメイク、ファッションに関心の高い人たちが勉強を始めました。
パーソナルカラーの問題点
現在では趣味感覚で資格取得できるようになった“パーソナルカラー”ですが、最近はアパレルブランドなどのイベントで診断してもらえたり、機械を用いてAIが解析してくれたり、手軽に診断が受けられるようになりました。
一方で、「この先生にはスプリングと診断されたけど、あの先生にはオータムといわれた」「診断してもらったけど、自分の好きな色じゃない」という方が現れ、せっかく診断してもらっても「診断迷子」におちいる人が増えているという問題が起こっています。
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