「すべての美は数式であり、ファッションは学問である」を提唱するファッションプロデューサー・服飾専門家のしぎはらひろ子です。この連載では、ファッションのプロとして身につけておいてほしい「ファッション理論」をお伝えしていきます。
ファッション雑誌などで「縦のラインを強調するとスタイルアップ!」といった言葉を見かけたり、日頃の接客で「トップスをコンパクトにすると足長に見えます」といった提案をしたりすることはありませんか?
スタイルを良く見せるためには、さまざまなテクニックがあります。7回目はそのテクニックの基である「錯視」について学んでいきましょう。
錯視や認知心理学がスタイリングに必要な理由
錯視とは、目で見た対象物を脳が勝手に補正・変化させて認知してしまうことです。
明るさや色、大きさ、形、方向、運動など、さまざまなものに作用し、「太いものが細く」「小さいものが大きく」「長いものが短く」見えるという効果があります。
人はある対象物を認知するときに、過去の記憶や学習によって得た知識などを使い情報処理します。その過程を明らかにする学問は“認知心理学”と呼ばれ、錯視は認知心理学の代表的なものです。
この錯視をスタイリングに活用することが、スタイルをよく見せるためのテクニックになります。
例えば、ジャケットやシャツの袖をまくり手首を見せたり、パンツの裾を折り上げ足首を見せたりすると痩せて見えます。これも錯視を利用したスタイリングです。手首・足首・ウエストなど、体の細い部分を見せて強調することで痩せて見えるのは「アモーダル補完」といいます。出ている細い部分と同じように、見えないボディ部分を脳内で補完し、全体像として細く見えるという錯視を利用しています。
このほかにも覚えておくと便利なスタイリングで使える錯視を4つご紹介します。
スタイリング上手になれる4つの錯視
1,ミュラー・リヤー錯視
同じ長さの線の両端に、内向きの矢羽を付けると長く見え、外向きの矢羽を付けると短く見える錯視です。
これをスタイリングに落とし込む場合は、全身を1本の線に見立て、上部と下部に外向きのVラインを作りましょう。
例えば、トップスにVネックのアイテムを取り入れたり、シャツのボタンを開けて着てみたりすると、縦のラインが協調され、全体がスッキリとして背を高く見せる効果があります。
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