「すべての美は数式であり、ファッションは学問である」を提唱するファッションプロデューサー・服飾専門家のしぎはらひろ子です。この連載では、ファッションのプロとして身につけておいてほしい「ファッション理論」をお伝えしていきます。
6回目のテーマは、プロの販売員として身につけておきたいヒアリングと提案について。接客では、丁寧なヒアリングができてこそ、お客さまが求める提案ができるようになります。同時に、提案するときの言葉の選び方も重要です。今回はヒアリングと提案のポイントをお伝えします。
TPOとPPSをしっかり聞き出す
前回は、プロの販売員がおこなっているコミュニケーションについて解説しました。
その中で、プロの販売員とは“お客さまにとって最適な一着を選んで、お客さまのなりたいイメージをファッションで叶えるサポート役”であると定義しました。
では、そのためにプロの販売員として何をしたらいいでしょうか。
それはヒアリングと提案です。
とはいえ、感覚に任せて何となく会話をするのは、ヒアリングとはいえません。ヒアリングは、お客さまのなりたいイメージや困りごとを引き出すことが目的なので、「TPOとPPS」を念頭に置いて質問していきましょう。
TPOは皆さんもご存知だと思いますが、Time(時)・Place(場所)・Occasion(場合)の頭文字で、「時と場所と場合によって服装や言葉を使い分ける」という意味です。
通常の接客でも、お客さまに「どこかに着ていかれるご予定がありますか?」と聞きますよね。ですが、すべてのお客さまが何かの予定に合わせて服を購入するとは限りません。となるとTPOだけでは、お客さまに最適な一着を提案することはできないということになります。
そこで、もう一つPPSがあります。
PPSとは、Person(人)、Purpose(目的)、Season(季節)の頭文字を取った造語です。
時と場所と場合に加えて、誰と会うのか、どんな目的で会うのか、いつ頃会うのかで、さらにスタイリングが変化します。
TPOとPPSを明確に引き出すことができれば、お客さまのなりたいイメージを叶え、困りごとを解決できる可能性がさらに高まるのです。
また、購入の決め手になる背中を押す一言も伝えることができるようになります。それができれば、お客さまから「この方はプロの販売員だ」と信頼していただくことができます。
ファッションが持つ言葉をお客さまへ伝える
ヒアリングでお客さまのなりたいイメージを叶えるコーディネートや、困りごとを解決できる一着を選ぶことはできました。
次に大切になるのは、その一着がお客さまにとって最適だと思った提案理由を明確に伝えることです。自分の持っている知識や情報を活かし、お客さまが理解できるように提案するためには、言語化が重要になります。
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