「すべての美は数式であり、ファッションは学問である」と提唱するファッションプロデューサー・服飾専門家のしぎはらひろ子です。この連載では、ファッションのプロとして身につけておいてほしい「ファッション理論」をお伝えしていきます。
5回目のテーマは、プロの販売員としてのコミュニケーションについて、解説していきます。お客さまとコミュニケーションする上でプロの販売員がしていること、店頭に立つときの心構えなどをお伝えしていきます。
お客さまにとって販売員はファッションのプロ
みなさんは、毎日どのような気持ちでお客さまと接していますか?
日々、店頭には洋服を買いにお客さまが来店しますが、何かしら困っていることがあり、それを洋服で解消しようと思い、店へ足を運んでいます。
もちろん、次の予定までの暇つぶしという方もいらっしゃるかもしれません。ですが、そういった方でも何かしら自分にとってメリットがある商品はないかなと思いながら、商品を見ています。
さまざまな思いを持ちながら店内の商品を見ているお客さまにとって、販売員はたとえ新人であってもファッションのことなら何でも知っている“ファッションのプロ”なのです。商品を見ただけではわからないことや、コーディネートの仕方などは、販売員に聞けば解決できるとお客さまは思っています。
では、“プロの販売員”と聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべましたか?
例えば、商品知識が豊富な販売員は優れていると思いますが、その場の空気を読まずに知識をひけらかすように商品説明をしていると、お客さまもうんざりしてしまいますよね。
逆に商品知識が乏しく、お客さまから「そんなことも知らないの」と厳しい言葉を投げかけられて右往左往していると、「この販売員には相談したくない」と思われかねません。
また、どの服を着ても「似合いますよ」「かわいい!」としか言えない販売員は、お客さまにとって参考になる情報が聞けないので必要ありません。
販売員は何を基準に“似合う”、“似合わない”をジャッジメントしているのかは、お客さまが最も知りたいところでしょう。
だからこそ、お客さまにとって最適な一着を選んで、お客さまのなりたいイメージをファッションでサポートしていくことがプロの販売員ではないでしょうか。
プロの販売員がしているコミュニケーション 10のポイント
これまで、著名人のパーソナルスタイリングなどで、たくさんの販売員に出会ってきました。その中で、「この方はプロだな」と感じた販売員がどのようなコミュニケーションを行っていたのか、10項目でまとめてみました。
①顧客心理を読む
入店したお客さまを観察して、お客さまの心理を読み解きます。声掛けは、「必要であれば呼んでください」程度にとどめておき、暇つぶしなのか、目的を持って来店したのかを見極めます。
②聞くことから始める
コミュニケーションの基本は、聞くが8割、話すは2割が鉄則です。来店目的をたずねる際も、お客さまの目線や表情、こちらが投げ掛けた質問への反応をよく観察しましょう。
一つ注意したいのは、
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