「すべての美は数式であり、ファッションは学問である」と力説するファッションプロデューサー・服飾専門家のしぎはらひろ子です。この連載では、ファッションのプロとして身につけておいてほしい「ファッション理論」をお伝えしていきます。
4回目のテーマは前回に続いて「服装の歴史」。学校での歴史の授業は退屈だったという方も多いと思いますが、仕事をする上で実は活躍するのが歴史の知識。今回は楽しくファッションの歴史を学ぶ方法をお伝えしていきます。
ファッションの歴史は映画から学ぶ
服飾専門学校や大学では、服装史の授業がありますが、年号を覚えるだけの授業は退屈で学生にも不人気なのです。そこで、私は少しでも学生たちに興味を持ってもらうために「映画の中のモードを辿る」をテーマに、「この時代はこの映画」と当てはめてみるという実習を行っています。
映画は総合芸術であり、ほかの芸術と切っても切り離せない関係にあります。絵画も音楽も、そして服飾の世界も同様です。映画の世界では、専門家による歴史考証を参考に美術チームが建築物・内装・服飾・生活雑貨など、全てに対して忠実に再現するので、時代の特徴を全体で捉えることができます。
ですから、映画は娯楽でありながら、ファッションの歴史を学ぶことができる素敵なツールなのです。
40年代には映画の世界で名だたるデザイナーが活躍するようになります。
いまだに多くの女性を魅了する「シャネル」は、映画スターたちを魅了し、50年代に活躍したデザイナーのクリスチャン・ディオールはマレーネ・ディートリッヒ主演がしたヒッチコックの作品「舞台恐怖症」で衣装を担当。そのほか数多くの映画で衣装を手掛けました。
90年代に大ヒットしたSF映画「フィフス・エレメント」ではジャン・ポール・ゴルチエが衣装制作を担い、アバンギャルドなデザインが当時話題に。
また女優であり、パリモード界のアイコンとしても活躍したオードリー・ヘプバーンは、デザイナーのユベール・ド・ジバンシィなくては語れない存在です。
このように映画制作とファッションは密接に関わり合います。さまざまな時代を表現する映画作品において、衣装はその時代や登場人物の背景を表す重要な演出の一つなのです。
そのため映画を見ることは、ファッションを学ぶことにもつながります。
参考として、古代~現代を描いた代表的な映画と、各時代の社会背景や文化、服装の特徴をまとめました。それぞれの時代に思いをはせて、鑑賞してみてください。
映画を観ながら、自分でオリジナルなファッション史を作ることもおすすめですよ。
古代
『クレオパトラ』(BC3200~AD395年)
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/cleopatra
古代エジプトは、神や精霊に対する観念が生活や服装に反映された時代。男子は腰布、女子は胸から足首までを覆う筒型のワンピースを着用。神官や貴族、王族の服装は衣服の材質や形状よりも、身分や職業に応じた特別な装飾品を身につけることで庶民と区別された。
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