キャリア相談スナック・ALL IS NEWがスタートしました。
この連載では、毎回皆さんからいただいたお悩みに、キャリア支援を手掛ける株式会社ALL IS NEWの吉田直哉と鶴戸茉利が飲みながらゆるーく語りつつ回答していきます。どうぞよろしくお願いします。
記念すべき、連載第1回のお悩みはこちら。
毎回、面談でマネージャーから「目標はないの?」と聞かれます。でも、なにも思い浮かばなくて。
ちょっと憧れてた販売員になれたからこのままでイイんだけど、それでは駄目ですか?
そもそもキャリアってなんですか?
(20代女性/カジュアル系ブランド勤務)
なるほど。これは販売職に限らずどの職種でもよくあるシーンだね。
あるあるですよね。個人面談での「目標はないの?」の質問。
この質問を投げかけるマネジャー自身がこの問いに答えられないなんてことも、実は多かったりする(笑)。茉利は、目標を持ってないとダメだと思う?
今回の相談で言われている「目標」はあくまでも会社の中でのことだと思うんですが、そうであるならば、目標は持っていてもいなくてもどちらでもよいかなと。
もうちょっと踏み込んで本質的な意味でお伝えするならば、目標はあったほうがいいんじゃないかと思います。必ずしも会社の中だけで目標を考える必要がないと言いますか……。もっと外の世界にも目を向けて、自分が“どう在りたいか”を考えることはとても大事だと思うんです。
確かにそうだね。閉ざされた世界の中で「目標を持て」と言われても難しいよね。選択肢が限られるわけだし。
「目標」というと少し堅苦しくてとっつきにくい印象があると思うんですが、“自分の人生をどう過ごしていきたいか”ということ自体、十分に目標といえますよね。
そういう観点から「目標があったほうがいい」と考えるんだね。
少し話が変わりますが、これまで多くのキャリア相談を受けた中で、「もう少し早く相談してくれれば……」と感じることは少なくないです。例えば、「年収を上げるために大きくキャリアチェンジしたい」と思ったとしても、チャレンジするなら数年前のほうが格段に実現可能性が高かったのに……といったケース。
俺も何度も目の当たりにしてきたなぁ。
「こんなことを目指したい!」と思ったときには、もうチャレンジが難しい状況だったり、選択肢が限定的になっているということは本当に多いです。
日本においては、計画的ではなく、そのときになって急に今後のキャリアを考え始める人が多いかもね。そうなると対処療法的な転職になってしまう。
だから、まずはいろいろな将来の可能性を知ろうとすることが大事かなと。その上で自分の生きていく方向性を決める、つまり目標を持つべきなんじゃないかなと思います。
目標を持つメリット
そうだね。ちなみに目標を持つと何がいいんだろう?
目標を持つメリットは、逆算して考えられることですかね。直哉さんは目標から逆算して行動した経験ってありますか?
どちらかと言えば、常に具体的な目標を立てて逆算して動いていくタイプだから、そういう事例は多いかも。例えば、ライフプラン自体もそうかな。福島県出身で大学進学のタイミングで上京したんだけど、長男だし、そう遠くない未来に両親の介護問題と直面するだろうなと思いつつ、Uターンして地元企業に就職するイメージも持てなくて。時間と場所に縛られずにちゃんと稼げる状態をつくるしか解決方法がないなと思っていたんだよね。そんなときに東日本大震災があってさ。ますます将来を考え直す大きなきっかけになった。それで「時間と場所に縛られずに稼げる力を身につける」ことを目標に掲げて、大手人材会社からヘッドハンティング会社に移ったんだ。
それはなぜですか?
大手で働いているときは、会社の看板で仕事をさせてもらってるという自覚があって。逆に言えば自分の力ではなく、会社の名前を借りてお客さんに過大評価してもらっちゃってる感覚というか。でも、時間と場所に縛られない状態を目指すなら、自分の看板で勝負できるようにならないと話にならないって思ってね。
当時30歳だったんだけど、親の年齢を考えると35歳ぐらいまでにはその状態を手にしている必要があるなと。で、冷静に35歳までにその到達点を目指すとすると、このままの仕事やキャリアの積み方ではもう間に合わないという危機感を覚えて、すぐ行動に移したんだよね。
具体的に35歳と日付を入れての逆算!
そうそう。“いつまでに”と日付を入れた瞬間、それが目標から実現可能な計画に変わったというか。「“いつか”と思っている人には一生その時は訪れない」っていうのが持論だったりするんだけど、自分の中でしっかり期日を決めるって大事だと思うな。
納得感ありますね。具体的な期日を決めず、なんとなくやってみたい、憧れのレベルだと、すぐ行動!とはならないです。私も目標に期日を入れるってこと、意識していきたいと思います。
ぜひやってみて! 本当に人生の進み方が変わると思うよ。
将来に向けて“在り方”の選択肢を増やす
今回のご相談で結構大事なポイントかなと思ってるのが「ちょっと憧れていた販売職」って部分なんですよね。
憧れたということは、素敵な販売員さんに接客をしてもらったとか、何かしら販売という仕事を知る、魅力に感じたきっかけが、きっとあったわけですよね。どんなことでも、たまたま偶然に知ることで「目指してみたいかも」「やってみたいかも」っていう意欲が湧いてくるんじゃないかと思うんです。
確かに。最初から大きな目標を立てようとするのではなく、知ってることを増やそうと動いてみると、その新しい出会いの中から結果として目指したい目標が偶然見つかることも多いよね。
実は私も「知る」ことで動けた、選択できたという経験があるんです。新卒から3年間販売職だったんですけど、当時、転職を考えた際の目標は「年収を上げる」でした。年収を上げるならインセンティブで稼げるブランドに入ることしか知らなかったけど、エージェントから「目的が稼ぐことなら他の選択肢もあるよ」とアドバイスをもらいまして。
いわゆる「目的と手段」の話だね。
あらためて「どう生きたいのか」にフォーカスした結果、私は販売職からヘッドハンターに転職するという意思決定をしました。目標に対して、それを実現できる他の方法を知れたからこそ、できた選択です。そもそもこうした選択肢があることすら知らなければ、私のキャリアも全く違っていたと思います。
なるほど。知ってることを増やしたことで選択肢が増えて、その中で最適な選択ができたということだね。
はい。相談に戻ると、相談者さんは「ちょっと憧れてた販売員になれたからこのままでイイ」とのことですが、販売職を一生続けたいのか、それによって行動が変わると思うんです。
転職相談で「自分の年齢と客層やブランドイメージが合わなくなってきて」という悩みを多く聞くんですけど、このケースでは、もし販売職を続けたいのであれば転職によってブランドを変えていくしかなくなるんですよね。
確かにそういう相談は多いかも。年齢を重ねていくと感性も変わっていくし。
そうなんですよ。今回の相談者さんはカジュアル系ブランド勤務とのことなので、例えば10年後もそのブランドや商品、お客さまと対峙できるかを考えてみる。それもキャリアを考えるきっかけになるんじゃないかなと。
先ほども話しましたが、もし将来「ブランドを変えたい」「転職したい」となった場合、転職できるかどうかはそれまでに築いた経験値に大きく左右されてしまう。なので、それを踏まえて早めに自分のキャリアに目を向けてプランを考えることが大事なんだと思います。
経験してきた商材や価格帯、顧客層によって、即戦力とみなしてもらえるかどうかは変わってくるもんね。
そうなんです。そしてこれは販売職に限らずですが、これだけ変化が激しい時代においては「そのままその居場所に居続けること」にも努力が必要だと思いますし、自分自身をアップデートしていかなければやがて居場所がなくなってしまうのではないかと……。
それは、強く感じるなぁ。昔と比べて不確実性が高い社会になってきてる。
今の時代において「何もしない現状維持」は退化、つまり現状維持すらできないということを意味するんだと思います。だから、一人ひとりがしっかりとキャリアと向き合う必要があると思うんですよ。
その感覚、すごいある。じゃあ、あらためて聞くけど、そもそもキャリアってなんなんだろうね?
「働くことも含めた自分の人生を、自分の意思で選択し、デザインすること」だと私は思います。
生き様そのもの、ってことだよね。
今回の相談に戻ると、「目標」と聞くと「店長を目指す」とか「もっと売上を上げる」とか限定的な視野で考えがちだけど、どんなふうに生きたいかを自分に問いかける、と視野を広げて捉えてみるといいかもね。それが見つかればそのこと自体が十分立派な目標だから。
そうですよね。「もっとライトに考えていいんだよ!」とお伝えしたいです。
なんとなく働き続けて知らぬ間に選択肢がなくなっていた、時すでに遅し、とならないように、まずは将来自分がどういう状態でありたいかを考え、その状態を得るための選択肢を知り、その上でどう行動するのか。ぜひここを考えてもらいたいですね!
吉田直哉(よしだ なおや)
(株)ALL IS NEW代表取締役社長。福島県いわき市出身。大学卒業後、バーニーズジャパンへ入社。販売スタッフとしてキャリアをスタート。その後リクルートエージェント(現リクルート)へ転職し、転職・採用支援をおこなう。退職後は「ファッション×キャリア」の領域を中心に活動。ヘッドハンティング会社でのVice President、スタートアップでの執行役員を経て2021年に㈱ALL IS NEWを創業。人材エージェントのほか、スナックのオーナー、講師、アロハシャツブランドのディレクターなど、何足もの草鞋を履きながら自らが働く楽しさを体現している。東京と福島2拠点でデュアルライフを実践中。
X(@naoya0115BC)https://x.com/naoya0115BC
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鶴戸茉利(つると まり)
(株)ALL IS NEW執行役員。宮城県仙台市出身。新卒で外資系イタリアブランドの販売職としてキャリアをスタート。その後ファッション業界に専門特化したヘッドハンティング会社にて転職支援を行い、現在は人材紹介事業部責任者を務めつつ、文化服装学院での非常勤講師、メディアにてキャリアに関する連載を持つなど、複業家としても活動中。
趣味は遠征するほど情熱を捧げている宝塚、ラジオを聴くこと、グルメに美容にトレーニングとアクティブな生活を送る。
X(@mari1010t)https://x.com/mari1010t