大きな窓にかかる真っ白なカーテンの向こうに、アスリートたちが熱戦を繰り広げるスポーツの聖地、国立競技場が見える。周囲にはちょっとした飲食店はあるが、アパレルショップはない。
「周囲に店はほとんどありませんが、流れている気は良いんです。それにこのロケーションは他にはありません」と話すのは、『L-O-V-E(ラブ)』を運営する五月一日デザイン事務所の村中研志郎さん。
確かにこのロケーションは都内に居ても中々見ることはできないし、気持ちが高まる感覚がある。
共通点のある三人が生み出す優しい気持ちに包まれた空間
国立競技場の向かいにあるビルの一室に、2022年10月29日オープンした『L-O-V-E』は、村中さんがデザイナーを務めるブランド『MarchAprilMay(マーチエイプリルメイ)』『MAY/ FOOL(メイフール)』をメインに扱うショップ兼ギャラリーだ。優しい気持ちになるピンク色の壁面には「life of value eden」と描かれている。
「これがこの店のコンセプトで、頭文字をとって『L-O-V-E』としました」(村中さん)
「村中さんがコロナ禍で開催していたグループ展も『ラブ展』という名前で、これしかないよねとすぐに店名が決まりました」と話すのはショップマネージャーの金刺志津香さん。
「一足先に退社して、いろんな企業を見てきて分かったのは、私たちは愛のある会社で働いてきたということだったんですよね」とプロデューサーの石木田彩さんは言う。
村中さんと金刺さんと石木田さんは、元々同じアパレルメーカーで働いていた同僚なのだ。一足さきに退社した石木田さんは、別のアパレル企業へ転職した後、現在は大手デベロッパーに勤務。現在は副業として『L-O-V-E』に携わっている。村中さんは2018年に独立。出身の大分へ活動拠点を移し、自身のブランドを立ち上げた。金刺さんは22年10月に退職。その半年くらい前に村中さんへ電話で10月に退職することを報告すると『店をやってみない?』と誘われた。
「東京で拠点を構えようと考えていたところに、金刺さんから退職する報告を受けて、すぐに『店をやってみない?』と誘いました。社内でも有数の販売のスペシャリストでしたし、店長やマネージャー経験もあるのを知っていたので、これはチャンスだと」(村中さん)
「驚きましたけど、それ以上に『やってみたい!』という気持ちが高まりました。その電話の後すぐに石木田さんへ電話して、村中さんと話したことを伝えて、『一緒にやってみない?』と伝えたのです」(金刺さん) 退職を報告した電話のあと、5月中には店の場所が決まり、店名も決まった。
村中さんのブランド『マーチエイプリルメイ』は、「春に着る服、春を待つ服」をコンセプトに天然素材を使用した心と体と地球に優しい服を提案している。型数も厳選し、お客さまに必ず喜んでもらえる服を作っている。
「今期はある程度型数を作って展示会をしてみましたが、今後も同じくらいつくるかは分かりません。コロナ前からアパレル業界では供給過多が課題になっていて、ルーティン化している業界のモノづくりに疑問を持つようになったことが、独立するきっかけでした。もっとじっくりブランドを育てるのもいいのではないかと思い、無理に毎シーズン新作を作るということもせず、ものづくりをしています」(村中さん)
自身のブランド以外にも、各業界でモノづくりをしている元同僚たちの雑貨やアクセサリーも店頭には並んでいる。退社した者同士が繋がり続け、場を作っている。こんな店は中々ないと思う。
ファッションを通して自分の愛し方を伝える愛の伝道師たち
「販売からデベロッパーに入り、最近特に『アウトプットできる場所が欲しい』と感じていました。プロデューサーという立場で何が貢献できるかと考えたとき、店名にもちなんでこの場所から愛を発信していきたいと二人に言いました」(石木田さん)
よく他人には『ご自愛ください』と伝えることはあるが、実際に自分を愛せる人、自分の愛し方を知っている人はどのくらいいるのだろう?また、自分を大切にしている人の方が他人にも優しくできる。これは間違いない。ファッションを通して、自分の愛し方も伝えていく。店というより場所のようだ。 オープンしてから、自分のイメージカラーを知るワークショップや、セラピストによる自分のことを知るワークショップなどを開催している。今後もそういったワークショップを開催する予定だ。
最近は全国各地の商業施設からポップアップイベントの依頼も増えつつあり、お客さまから「ずっと行ってみたかったんです」といわれることもある。
「そう言われると、その気持ちに応えなきゃ!と思います(笑)。いままでは会社の中で店舗運営してきましたが、自分たちの店となるとその経験が良い意味で通用しないんです。改めて一客一客の重みを実感しています」(金刺さん)
都内のお買い物スポットから外れた場所にあり、気軽に立ち寄れない分、旅程にわざわざ組み込んで来店する。そんな特別感があるからこそ、伝わるものも大きいように思う。
最後に三人にこれからやってみたいことを尋ねると、「日本各地をキャラバンしたい」「中国からもお客さまが来たので、海外でもポップアップをやってみたい」「キャラバンするならワークショップもやって、愛の伝道師になりたい」と夢はどんどん広がっていった。
店名:L-O-V-E by MarchAprileMay
所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷2-33-10 DAVISIONビル2F
営業日:インスタグラムでご確認ください
ホームページ:https://lovebymam.stores.jp/
インスタグラム:https://www.instagram.com/love_by_marchaprilmay/